Stage Mother ステージ・マザー 感想 前半ネタバレなし紹介・後半ネタバレ

2021年2月26日に日本では公開されますが、アメリカでは公開済み&アマプラレンタルが来ていたので視聴しました。
かなりオススメだったので感想を書こうと思います。
ステージ・マザー 日本語版公式サイト

あらすじ
ゲイであることで疎遠になっていた息子リッキーの死を知る母メイベリン(ジャッキー・ウィーヴァーWiki)
葬式に向かうも追悼にドラァグクイーンが登場したことにたじろぎ、途中退出してしまう。
リッキーのパートナーであるネイサン(エイドリアン・グレニアーWiki)はドラァグクイーンがステージに立つゲイバーを共同経営しており、メイベリンは相続権があることを知らされる。
ゲイバーが息子の夢の場所だったと知ったメイベリンは経営難に陥っていたバーを立て直すことを決意。
働いていたクイーン達、ネイサンリッキーの親友シエナ(ルーシー・リューWiki)とも関係を築いていく中で自分の現状も振り返っていく。

感想
監督はトム・フィッツジェラルドWiki。過去作にはゲイやレズビアンをテーマにしている作品もあり、ドラァグに対する愛も存分に感じます。正直、ドラァグクイーンは役者さんなのでちょっとぎこちないかな?(RPDRを見まくってるせいで)と思うところもありましたが、曲やステージの展開など作り手が「好きなんだな」と伝わってくる素敵なステージシーンが多いです。
また、リッキーのドラァグマザーのダスティジャッキー・ビートWiki Instagramという本物のドラァグクイーンの俳優です。リップシンクシーンがあるんですがやっぱり格が違う…(メイベリンの琴線に触れるシーンで使われるのがまたうまいなと思いました)
また全員が当事者ではありませんが、メインのチェリー役にトランスジェンダー俳優(マイヤ・テイラーWiki)ジョアン役にクィア俳優(アリスター・マクドナルドInstagram インタビュー)が起用されてるのも素晴らしいです。※調べても明確に出てないだけで実際にはもっと当事者の俳優がいるかも
ルーシーリューもチャーリーズエンジェルなどでゲイアイコン的存在なので絶妙なキャスティング。(キャラもよかった)
老年期の女性の話という事で全体的にしっとりとしていますが、暗くなりすぎずさわやかなお話でした。

以下ネタバレ感想 ※気になる方は読むのをお控えください

クライマックスのカタルシスが…泣
パフォーマンスシーンも多い中、最高のパフォーマンスを最後に持ってきてエンドというのがこう来たか!最高!という感じ。
息子の生前のパフォーマンスを白い衣装に投影してデュエット… 考えた人天才か??と思いました。絶妙に伏線でメイベリンがそれを見てたシーンがあったのもニクい…!
また子供の頃の2人がその曲で踊ってたのも回想で重なって…泣
最後には意志を引き継ぐドラァグシスターたちも登場して、会場と大合唱…映画館で見てたら号泣すると思う。

ジョアンやシエナの赤ちゃんを息子のようにも思いつつも悲壮感が重すぎないのが、この映画を絶妙に軽やかにしてると思いました。
メイベリンはドラァグクイーン達の悩みも解決していく中、トランスジェンダーであり、女性としての外見になったことを妻に告白してないっていうチェリーの後押しもします。が、告白はできたけど元妻は受け入れないんだよね。
またメイベリンの夫は最後までリッキーのことを許せず、周りにも嘘をつき続ける。そこで対話はするんだけど、お涙ちょうだいで夫は受け入れて和解するんじゃなく夫から離れる事を選ぶ。
そういう絶妙な積み重ねが感動ポルノにならない、消費されてないと感じさせてくれると思います。結局受け入れてくれない人は受け入れない、そういう人は置いておいて人生は進むんだってすごくわかる。
クィア的な悩みだけでなくシエナが性的暴行を受けてたのを助けるところも、クィアだけじゃなく弱きものの側に立ちたいって言う監督の目線を感じた。(銃を携帯してるのはどうかと思ったけど…)
間違いなくクィア当事者の目線だなと思いました。とても良い映画でした。

別の映画のインタビューですが監督が自分自身がクィアと語っている記事がありました。The Hanging Gardenというゲイがテーマの映画で有名なんですよね。あらすじ読むと辛そうなのですが、いつか見ねば…。

1/23追記 この作品も『ドラァグクイーンの世界と、宗教的な母が息子の性を受け入れる様子は、私の経験から直接得た知識を基に制作してる』とのインタビューが出ました。
『ステージ・マザー』監督が名作との共通点を語る 劇中の親子関係は実体験もベースに

3/3追記 The Hanging Garden見ました
太ったゲイで辛い少年期を送った青年が妹の結婚式で実家に帰ると、庭先に自分の少年時代の首吊り死体が見えるようになり…という話。
辛い映画だと覚悟していたんですが、過去と向き合い清算していく前向きなストーリーでハッピーエンドも相まって想像以上に軽やかな映画でした。
当事者ならではの視点というと短絡的かもしれませんが、こういう繊細で絶妙な描写ができるのはこの監督の力なんだろうなと思いました。他にもクィアがテーマの作品撮ってる方なので見てみたいです。